対話を重ね、深く理解することで引き出していく企業のアイデンティティ/株式会社パラドックス?卒業生 奥山千遥

インタビュー

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魅力を言語化することで生まれる新たな展開

――はじめにパラドックスさんの業務内容について教えてください

株式会社パラドックス 奥山千遥さん お話をされる奥山さん
お話をお伺いした奥山さん

――これまでどんなお仕事を担当されてきましたか?

奥山:歯科衛生士の専門学校からのご依頼で、学校自体のリブランディングを担当させていただきました。最初は、校舎の建て替えプロジェクトと同時に学校のロゴといったデザイン的なところを整えたいというご依頼だったんですけど、弊社はデザインを綺麗にすることが生業ではないので、まずは話を聞かせていただいて、その学校にしか言えないようなことを言語化していきました。そして、その方針となるようなスローガンを先生方と考えながら、一緒にデザインしていった感じですね。先生方はもちろん卒業生の方にもインタビューさせていただきながら、どういう課題があり、どういう「らしさ」があり、どんな強みがあるのかをまとめていきました。

株式会社パラドックス 奥山千遥さん お話をされる奥山さん

――話を聞きながら課題や魅力を引き出していくというのは、どの案件でも共通して行っていることなのでしょうか?

奥山:そうですね。弊社ではワークショップのような形でかなり話をじっくり聞くんですね。そこから「この会社には、他にはないこういう良さがある」というのを言葉にして表現してあげて、それをデザインなどいろいろなところに落とし込んでいくんですけど、それってすごく本質的な感じがして、私がやりたかったことに近いなって思いますね。

――また奥山さんが制作を担当された日本海洋事業さんのコーポレートサイトが、日本BtoB広告賞の銀賞を受賞されたとお聞きしました

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――パラドックスさんだからこそ体感できる仕事の面白さがたくさんありそうですね

奥山:そうですね。魅力なのは仕事が終わった後も関係性が続いていくことで、「パラドックスさんが一番自分たちのらしさや強みを客観的に見てくれているから、コンペの提案資料を一緒に作ってほしい」と声をかけていただくこともあったりします。WEBやパンフレットを作る会社さんというのは他にもたくさんあると思うんですけど、ここまでお客様の話を聞いて、長くお付き合いしていくことを前提にしているところってあまりないんじゃないかなって。学生の頃から、企業の方とやり取りする楽しさというのが私の中で一つの軸になっていたので、いろんな企業のお役に立てたり面白い企業に出会ったりできることが、この仕事の一番楽しいところですね。

自分の中の不安が「素質」に変わった瞬間

――企画構想学科への進学を決めた理由を教えてください

奥山:当時、企画構想学科にいらっしゃった関橋英作(せきはし?えいさく)先生の言葉が印象的だったんですよね。オープンキャンパスに参加した際、関橋先生に「自分が何をしたいのか分からなくて…。芸工大というクリエイティブなことをしている大学にすごく惹かれるけど、私は絵も描けないし、文章を書くのは好きだけどそれでやっていきたいわけでもないし、やりたいことがデザインなのか何なのか分からないんです。ただ、いろんなことに興味があって」っていう話をしたんですね。そしたら、「それなら企画構想学科がもってこいだよ。いろんなことに興味があるということは、その分引き出しが多いってこと。それこそがそもそもの企画の素質」って言ってくださったんです。自分は一つのことに対して尖れない人間だと思っていた時に、「引き出しが多いってこと」とポジティブに言い換えていただけたのが大きくて。感性が人より優れていないと…みたいなバイアスがかかっていたので(笑)。やっていることや知識のすべてが結果的に何かの企画につながってくるというところが、今でもすごく支えになっています。

――当時の学びが今も生かされていると感じることはありますか?

奥山:一番はやっぱり、大学の頃から企業の方々とやり取りさせてもらう機会がすごく多かったところですね。いかにお客さんの思いを汲みとれるかとか、社会での接点がどれくらいあったかとか、そういった実践を通しての経験値は、自分がお客様の前に立つにあたりとても大事だったと感じます。

また在学中は、「ひらめきコンペティション」という山形の企業さんが持っている悩みに対しての販促コンペのようなものを自分たちで運営させてもらいました。これは協賛いただく企業さんと山形新聞社さんとの産学官連携プロジェクトだったんですが、各企業さんとやり取りしたり、また広く募集するものだったので、アイデアを考えてくださる一般の方や学生さんとも接点があったりして、社会に出る上で土台となる力のすべてがそこに凝縮していたと思います。私たちは参加する側ではなく審査する側だったので、審査員をお願いする方や審査基準についても自分たちで決めました。

――また勉強以外の部分で思い出に残っていることは?

奥山:当時は自宅がある尾花沢市から車で約1時間かけて通学していて、往復100キロメートル以上ありました。あまりにも車生活し過ぎて、学科棟から学食までの間も車で移動していたくらい(笑)。なので「一駅だったら歩いちゃおうか」とか今言ってるのが嘘みたいです(笑)。

それから大学の敷地内で小さな子猫を拾ったことがあって、寒くてくしゅんくしゅんってしていたので家に連れて帰ったんですけど、そのまま実家で飼い続けていて6年くらい経ちました。

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――今後について思い描いていることはありますか?

奥山:ゆくゆくは山形に戻りたいなって気持ちもあるんですが、会社の状況や自分の人生のライフプランにもよるので、どうなるかはまだ分からないですね。でも山形の仕事をしたいという気持ちはすごくあります。山形には芸工大出身のデザイン事務所の方が結構多くいらっしゃるので、そういう方たちと一緒に仕事できないかなって画策しているところです(笑)。山形にずっと住むというよりは、2~3拠点みたいな感じでいろんなところと行き来して、山形や東北との接点を持ち続けながら一緒に仕事を作っていくようなキャリアはすごく楽しそうだなと思いますね。

――それでは最後に、受験生や在学生にメッセージをお願いします

奥山: 芸工大の企画構想学科に入らなかったら、絶対に今ここで仕事していないと思うんですね。多分、地元で公務員をやっていたんじゃないかなって。もちろん、本当に公務員になりたいと思っていたならそれはすごく良い夢だと思うんですけど、私の場合は芸工大に出会うまで行きたい大学がなかったので、それなら公務員になろうって考えで。皆さんの中にも、今行こうとしている道が何となく自分らしくない気がしている人や、ちょっと違うな…って違和感を持ったまま進もうとしている人っていると思うんですけど、そんな時はもう少しだけいろんなところを見てみてほしいですね。面白い選択肢って意外と近くにあったりしますし、それによって歩む道が大きく変わってきたりもするので。私は地元が山形なので、近くに芸工大があって幸せでした。

それから大学時代、すごく貴重だったなと感じるのが、周りの仲間と一緒に何かを企画するという経験をたくさん積めたことですね。それを皆さんにもぜひ経験してほしいです。同じ企画をする立場の人たちとチームを組むことで、自分は何が強みなのかがすごく見えてくるんじゃないかなと思います。

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いろんな企業と出会い、そして深く理解した上で長く付き合っていけることにこの仕事のやりがいを感じている奥山さん。ちなみに社内では、そのお客様になりきって考えることを「イタコ力」と表現しているそう。「私もその言葉を100%理解しているわけではないんですが、イタコのようにそのお客様の側に立って考えた結果、『私たちのことを本当に分かってくれている』と言っていただけることが一番の喜びだと感じています」。その企業の「中の人」になるべく、奥山さんは今日も対話を通して企業の魅力を多く引き出しています。

(撮影:永峰拓也、取材:渡辺志織、入試広報課?土屋)

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東北芸術工科大学 広報担当
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