大学院Graduate School

[優秀賞]
清水海斗|ストリートリノベーション ―エリアリノベーションとウォーカブル政策の組み合わせに関する研究―
神奈川県出身
馬場正尊ゼミ
家具

まちづくりの手法として「エリアリノベーション」というものがある、これは民間の草の根的まちづくりで、リノベーションした店舗が徐々に増え、それらがつながっていくことでエリアを包み込む面としてまちの魅力を増加させるというものである。しかしエリアリノベーションは一部の感度の良い人には届くが、多くの市民からは関係のないこととされていると考えられる。また現在国土交通省は新しいまちづくりとして居心地のよく歩きたくなるまちづくり「ウォーカブル政策」を行っている。歩くことによって生まれる偶然の出会いやリアルな繋がりによりイノベーションを創出するというものである。ただ現代の日本人は外でのアクティビティになれていないと考えられる。著者は昨年度山形市で行われた社会実験に参加した際、エリアリノベーションとウォーカブル政策の組み合わせに可能性を感じ、道の使いかたなどソフト面のリノベーションをストリートリノベーションと定義した。ストリートリノベーションはより多くの人の目に触れ、影響を与える可能性を持っている。またリノベーションされた店舗だけでなく、路面店同士をつなぐことができ、本当の意味でのエリアのリノベーションになるのではないだろうか。
本研究では、エリアリノベーションとウォーカブル政策の組み合わせの可能性を探り、街での空間体験の質を向上させ、持続可能な街へとしていく一つの方法を示すことを目的とする。また学生など公共空間へのアプローチがしづらい立場の人が、アクションを起こしていけるよう、実証実験としてプロジェクトを立ち上げ(1)、活動していくフローと行政や商店街との立ち振る舞いや介入の余地を示し、まちにアクションを起こす一助になることを目的とする。
実証実験として山形市すずらん商店街で行われたウォーカブル政策、歩行者天国化と建物の軒先80cmに店の物をはみ出させて良いというテラス化事業に対し、道に置く家具?ストリートファニチャーを設置(2)し、使われ方とまちのリアルな声の採取を行った。ストリートファニチャー製作はクラウドファンディングで資金を集め、デジタルファブリケーションの「ShopBot」(3)を活用し行っている。



酒井聡 デザイン工学専攻長 評
「ストリートリノベーション」と題し指導教員である馬場正尊の「エリアリノベーション」に紐付いた人と町をしなやかに結びつける研究である。まちづくりに必要なハードウェアを設えるだけでなく、それらをいかに使ってもらい、人と人をつなげ、コミュニケーションを起こすかは、近年様々な取組みがなされている。その中で「道」のあり方に着目し、ストリートファニチャーをデザインし、実証実験まで行った点を高く評価したい。特に山形市すずらん通りと行った「ヤマガタストリートリノベーション」では、クラウドファンディングによる資金集めから、ショップボットを使ったファブリケーションによる家具制作、実証実験までを丁寧に行い、人や商店などの点を家具でつなぎ、道に新しい価値を与えている。道行く人々が気軽に交流し、自ら町を作り出す、そのような活動をこれからも継続することを期待して優秀賞とする。

1.プロジェクトロゴ

2. ストリートファニチャー設置風景

3.ShopBot